あの娘の名前はprincess
序章「お妃様…どうか御気を確かに。もうすぐですから。」
「御覧くださいませ。珠のような赤サマですよ。女の子、姫様のお誕生です!」
この日ギルデルト国に一人の姫が誕生した。
―約2年がたち、姫様ミルフィーユは明日で2歳になります―
「なぁ、ルシカ」
ロイ王は、ここで、大きく溜息をついた。
「なんですの、ロイさま」
ルシカお妃は、すばやく答えた。
なぜなら、彼がもうそろそろ21回目を言いそうだったからである。
「本当に、わが娘ミルフィーユを例の儀式を行わなければいけないのか?」
「当たり前です。あなたもあなたのお父様もおじい様もご兄弟も皆様この儀式をとなさっています。今更変えられませんよ。それに山の奥には家、家具なども準備は整っております。ダンケもメルエもです。国民の皆様もミルフィーユの降臨式の噂ばかりで、しかも地方によっては降臨式のあたり数日は休みになる所もあるらしいのですってよ。」
「よ、よく知ってるんだな…。で、でも女がこの儀式にでて、還って来たのは、30年前のおば様だけだ。」
「それでも、です。いわせてもらえば、私だってミルフィーユを儀式なんかにやりたくありません。でもやらなければいけないのは、私達王族のきまりなんですから。国民の皆様を裏切ってはいけません。」
「でも、この儀式…おば様から聞いた話しでは山の神様が生贄として奪っているとか…そして、もし還って来た女は神に勝った証拠に不思議な力を得るとか…?」
「とりあえず、明日私達はシスティナ教会に国民の方々と同じ格好でいかねばなりません。早く寝ましょう。」
「わかった、よ。ミルとは明日でお別れだなんてな…」
「縁起が悪いですよ。ミルは、ミルフィーユは絶対還ってくるんですからね。」
「ああ…」
二人は、姫ミルフィーユにキスをしてベッドに入った。
風が吹き、山々はゆれた。月の下では一人の少年が今、魔術師としての証をうけとったのだった。