あの娘の名前はprincess
昨日と今日と明日1ここは、ちっちゃな村。ここから山を降りたところに町があるんだって。そこは、ここからちょっとだけ見える、あのお城が持っている場所だからとってもキレイな所なんだって。そこのお城にはお姫様がいて、私と同じ年なんだって。これ、全部ママに教えてもらったの。
ママはメルエでパパがダンケっていうの。あっ…私はミルフィーユっていって、5歳。ここには、目の不自由なサールおばさん、お野菜を育てるのがとっても上手なダイルお兄さんが住んでるの。ここは、とってもいいところだよ。それでね、私たちお友達にならない?
「ちょっと、ミルフィーユ。さっきから何ブツブツ言ってるの?」
「あの赤毛の子、いつ目覚めるの、ママ?私ね、あの子が起きたら一番にお友達になるの。だから、そのために自己紹介の練習してるの。」
「へぇ。あの子ねぇ、たぶんあと1日ぐらいしたら起きると思うわ。」
「あの子が起きて元気になったら、町へつれてくの?私たちのお家に住まわしてあげれないの?」
「うーん…。あの子によるわね」
「ふーん。」
「さっ、今からお勉強の時間でしょ?もう10分もロスしてるわよ。」
「はぁ〜い…」
ミルフィーユがしぶしぶ机にむかって座るのを見て、もう一度あの赤毛の子を見に行くか…と思ったときだった。いきなり…何か、物が落ちる音がした。そしてドン、ドンと何かが階段をフラフラと降りてきている音が続いた。
ミルフィーユは
「あの子よ!あの子が降りてきているんだわ!」
と、半ば叫ぶように言って階段のほうへ走った。
メルエはミルフィーユを止めようとしたが、何故かためらわれて、見ていた。
と、ミルフィーユが階段の1段目に到達したかとみえたところで赤毛の子が降ってきたのだった。ミルフィーユは急停止をして、腕の中に赤毛の子の包み込み、
「大丈夫?」
一生懸命あえぎながら言うと
「あぁ、オレのことを助けてくれてのか?」
と赤毛はそういった。
ミルフィーユはぶんぶんと頭を縦に振っている。と、
「あんた、名前は?」
不覚にも自己紹介ができなかったな、と思いながら
「ミルフィーユ」
とだけいった。
“ふぅん”と鼻を鳴らすようにいうと
「髪、きれいだな」
といった。
ミルフィーユは“何言ってんだこの人?”と思ったが、もっと気に障った事を言った。
「こんな癖っ毛、どこがきれいなのよ!」が、
「その色だよ、卵色のきれいな髪」と答えられ、そんな事いわれた事もないミルフィーユは
「ふ、ふぅん」としか答えられなかった。
赤毛はフッとかすかにに笑ったように口をゆがめ、
「なぁ、ミルフィーユ」
「いきなり、呼び捨て?」
「これから、ミルって呼んでいいか?」
“話きいてんのか?”と思いながら
「別にいいけど…?」
「それから、他の奴には、ミルって呼ばせるな」
「いきなり束縛?あんた何様のつ…?」
『もり』はミルフィーユの口の中でおあずけとなった。なぜなら、赤毛の奴が腕の中から抜け、倒れたからだった。
「ママ!赤毛の子が!」
ミルフィーユはメルエを呼び、一人かんがえていた。
“いきなり『ミル』だなんてビックリしたけどあの子に呼ばれても、そんなに嫌な気はしなかったなぁ…。ああぁ!名前聞いてない”という感じだった。
そしておもむろにメルエを呼び止めると、
「ママ…その子ここにおいてよ。私その子が気になる…。」
あとあと、どうしてそんな事を言ったのだろうと考えるミルフィーユだった。