あの娘の名前はprincess
はじまり2―*夢*『ミルフィーユ、ミルフィーユ』
「はい。あの、どこにいらっしゃるのですか?」
『足元だよ。』
そこには、白蛇がいた。
「私に話しかけてきているのは、白ヘビさんですか?」
『あぁ。』
“私…ヘビと会話してる。…夢?”
ここで、お馴染み。ミルフィーユはほっぺをギューっとします。そんな様子を見て、
『はは、夢だと思ってるのかい?』
“思ってます、思ってます…。だけど痛かったな。と、とにかく…”
「私に何の用でしょう?」
『ミルフィーユ、君、ここになっている『幸福のリンゴ』を食べないかい?』
「こうふくのリンゴですか?」
『あぁ、そうだよ。1つ食べるだけでいい。君が何をしなくても、外から幸福が降ってくるんだよ。素敵だろ?』
「……。あの、私、そのリンゴいりません。」
『なぜだね?食べるだけでいいんだよ?』
「そうですね…」
ミルフィーユは、どこか遠くを見るような様子になり、もう一度白蛇に目をもどした。
「私的には、私的にはですよ?シアワセって自分の手で勝ち取るというか、掴むからシアワセだし、シアワセって実感できるんじゃないですか?だって勝手に降って来たら、それがシアワセだって分からなくなっちゃいません?私、そんな不幸な人間になりたくない。」
『そう…か。それでは、この先にある4つの道のうち、左から2つ目をえらぶといい。じゃぁね。』
白蛇は忽然と消えていた。
テクテクと歩いていると本当に4つの道があった。
そして、さらに歩いていると…そこには
絶世の美女がいた――
が、すぐに人間でないことが分かった。
何故か、それは金の翼を背中に持ち、銀の美しい長い髪、雪に落ちた血のように赤い紅い唇、伏せられた目にある長い睫。
ため息がもれるほど、そのヒトは美しい。口をきくのも恐れ多い。
『ミルフィーユさんですね。』
「は、はい。」
『さっきのヘビとの会話、聞いてました。とてもとても良い、というか可愛い答でした。ミルフィーユさん、あなたは本当に愛されて生きてきたのね。』
「え、そ、そんな…あの、それより、あなたは誰ですか?とても美しい天使様ですか?」
『いえ、私は、ただの…ただの女神、のような物です。』
「あぁ、そうで…め、め、め、女神ぃぃぃー?そ、そんな「ただの」だなんて…。」
『「のような物」を忘れてますよ。』オホホ、と上品に笑う。
『少し、目を閉じて下さる?』
「え、はい!」
『よく、聴いてください。私は、これからずっとあなたと一緒です。』
「え?」
その瞬間、目が覚めた。
記憶にあるのは、生生しく残る白蛇や女神様(のような者)との会話。そして、『クラリス』という言葉。