Hanashi
寄り道「出てきたの?車掌室から?」
「はい。それは、もう美しい見た目で。しばらく見つめてしまいました。」
あはは、と少し恥ずかしそうに車掌さんは笑う。
「でも、車掌さんとその悪魔の車掌さんは見た目なんでしょ?」
「うん。でも、なんていうかその人は中身?魂までちゃんと悪魔だからって、何かおかしいけど。ほんとにそんな感じ。
だけど、僕はあくまでこの身体は借り物であって、中身は違うから。
見た目って、少なからず中身の影響うけると思わない?
とりあえず、僕はそのときにその悪魔に引き込まれてしまったんだ。魅せられたっていうかね。」
「見てみたかったかも。」
「僕じゃ、だめですか?」
ずいっと。いきなり、顔を近づけて目を合わせてきたから、すごくびっくりして。
「もっと、心ごと悪魔になって。そしたら貴女を魅了できるのかな。」
「いや、いやいやいや。ちょ、車掌さん。近いです、恥ずかしいです。」
「そうですか?」
目だけで笑って、すぅっと顔を離した。“あぁ、ドキドキした”と何度も言ってあらぬ方向を向きながら少し赤くなっている羽瑠を見つめて、やはりかわいいなぁ。そう口の中だけで言葉を転がした。
なんなの、車掌さん。キャラ変わりすぎ。ていうか私もドキドキしすぎ。
ちら、と火照る頬を扇ぎながら車掌さんをみると、とてもニコニコしながら私の方をみつめていた。
「車掌さん。」
「なんですか?」
「そんな期待に満ちた目で見ないでください、汗かきます。それより話が寄り道にそれすぎてます。」
「あっ!ごめんなさい。今すぐ、過去話に戻りにますね。」
と、いって、ふんわり車掌さんは笑った。