あの娘の名前はprincess

昨日と今日と明日4

ゴトンガサガサガサ。

ミルフィーユとシホンはさっと離れる。
「「……」」
シホンは“もし、今のがメルエさんかダンケさんだったらやばいよなぁ〜。それよりミルに嫌われてたらど〜しよ〜”
ミルフィーユは“さっきのシホンはいつもとビミョ〜に違ったような気がする…あの後離れなかったらどうなってたんだろう”という感じだった。
「「……」」
「…ミル、怒ってない…?」
「なんで?」
「あ、いや。なぁ、いまでも俺のこと好き?」
「なんでそんなこと聞くの?当たり前にシホンのこと好き、だよ。ううん、シふぉんにょこ…」
「『シホンのこ…』なんだよ?ミル?ミルフィーユ?」
と、ふと気づく。

ピューピュルルリルーピュ――
笛のような清んだ音が周りを包んでいることが。
「ミル!ミルミルミル!ミルフィーユ!」
何度も肩を持って揺さぶるがミルフィーユはガクガクと揺れるだけ。
「くそぅ。なんでおきねぇんだよ。」
と背負ってこの部屋を出ようと思った時――

「無駄、ですよ。赤毛さん。」
そこ、部屋のドアを開けて入ってきた人物、黒髪の人は微笑みながら言った。
黒髪は肩のあたりで切りそろえられていた。それは、カラスの濡れ羽より黒だった。その人は物語に出てくる漆黒の闇を固めたかのような魔法使いのような格好をしていた。そして、耳からは唯一の白、純白の羽が朱の糸でつけられていた。顔は入って来た時からずっと微笑をたたえていた。目は…目は髪で隠れていた。
「む、無駄ってなんでだよ。」
「私が魔術でこの村の者は眠らせているからですよ。」
「はぁ〜?魔術ぅ〜?」
「それがこの私、魔術師にかける言葉ですか?」
「……」“ビミョ―に怒ってる?この人…”
「あっそうだ。申し遅れました。第一魔術師、ギルデルト国王御用達、クライヴ=アレカール」
「第一?御用達?クライヴ?だれじゃそりゃ…」
「……」
「……?」
「お前…!俺様を知らんのかい!」
「うん。」と、相手、クライヴとやらはここで盛大にため息をつき
「第一ってのは魔術師の中でもすごいのと落ちこぼれといるだろ。だから第1〜13まであって上が1で、下が13。だから第一が一番すごいんだ。ギルデルト国王御用達ってことはこのフンマラス大陸で一番勢力があるのはここギルデルトだろ?だからその王の御用達って事はすごいだろ?だからこのクライヴ=アレカールを知らない者はフンマラス大陸にはいないはずなんだ…。が、この村のやつらは知らなかった。ここよりもっと小さくて奥の村でも知っていたというのに…。」と、一気にいった。
「魔術師がいるなんて知らなかったぞ、俺。」
「うそだ。だってこの村にも魔術師はいるじゃないか。もっとも第11だが。」
「えっ!だれ?だれだれだれ?」
「ダイルという若者だよ。」
「へぇ〜。ところでなんで俺だけねてねーんだ」
「やっと本題ですね。それは、貴方に用があったからじゃないですか。」
「何しに来たんだよ。」
「『城の西にいる。美しい赤髪の少年がいる。小さな村に。その子がきっと護ってくれる。きっとそこにいる。』」
「なんだよ、それ。」
「姫様の騎士を探すために呼んだ占い師の言葉。それに従って来たらみごと、そこには赤毛の少年がいたというわけさ。」
「姫様?へぇ〜いたんだ。」
「貴方本当に何も知らないんですねぇ」
「あぁ、そうみたいだな。まぁ、きっとミルもしらねぇだろうけど。」
「ミル?その隣の少女のことですか?」
「あぁ。本名はミルフィーユってんだ。」
「……上の名前は?」
「しらねぇよ。あ!俺はシホンだ」
「その姫様の名前もミルフィーユっていうんですよ。確か、今年6月の姫様誕生祭で12歳に成られたはずなんです。」
「……ミルも今年の6月で12歳になったんだ。」
「へ、へぇぇぇ…。なんか、に、似てますねぇ」
「「もしかして姫?」」
お互い顔を見合わせた。ゴクリと唾を飲むと二人で意味も無くアハハハハァと笑っていた。
「ま、まぁそれはおいときまして。問題は貴方、シホンを城に連れていくことなんですよ。で、来てくれますか?」
「あぁ?嫌に決まってんだろ!なんでミルと離れなきゃなんねぇんだよ。」
「もしかして貴方達、相思相愛?」
「ああ、そうだよ。」
「……。姫がそこの少女でも?将来シホンが護る姫になるかもしれないんですよ?」
「え?それ確定?」
「まぁ、そうなんじゃないですか?」“うそだけど…”
「じゃぁ、行くよ」
「本当ですか?じゃ、早速行きましょう。」と、手をあげかけたが、
「ちょっと待ってくれ。ミルとメルエさんダンケさんとに手紙を書いていくよ」
「ええ、いいですよ。」穏やかに言ったが、実はとてもドキドキしていた。なぜなら、メルエとダンケという名前が出てきてからだった。“うそだろ?マジでこの娘、姫様かも…”
「できた。じゃぁいくよ。」
「あ、あぁ。じゃあ」窓を開け、手を前に出しました。なにやら、呟くと…
「さぁ、お乗りなさい。」何も無い。というか、ここ、2階。
「何もねぇじゃねぇか!」
「あ、すいません。普通の人にはみえないんでした。ここには風と闇を固まらせたそりのようなモノがあるんですよ。」
「説明されてもなぁ。落ちたら骨折じゃん。」
「じゃあ。目をつむりなさい。」
ヘイへイと返事をして目をつむるとクライヴが腕をつかみジャンプしたかと思うと俺は突然の浮遊感にみまわれた。
トンッと何か硬いモノに立ったという感じがしたので目を開けてみると…そこは空中だった。足踏みをするとカンカンとおとがする。横にはさっき俺とクライヴが立っていたベランダがあった。
「な、何だ?こ、これは。」
「だから、さっきいってたモノですよ。」
「…へぇ。」
「じゃあ、お城へ行きましょうか。貴方が騎士様になれるように。もう、いいですね?」
「あぁ…」
クライウ゛がなにやら呟くと動きはじめた。シホンはギュッと目を閉じていた。

翌朝、ミルフィーユが目を覚ますと隣のベッドには誰もいなかった。
「シホン、どこ?」
いつもは、いつもは返ってくるはずの返事が今、返ってこなかった。
と、そこには手紙があった。シホンからだった。と、その時だった
「ミルフィーユ…ミルフィーユ様」
そんな、ママとパパの声が聞こえた。