アタシとオマエ(仮)

52分前のことA

藤倉 海(フジクラ カイ)は結構カッコよくてジャニーズ系(?)。いつも女子がむらがっててはっきり言ってウザイ奴。別に興味なし。
『ちょっと待ってよ。あの藤倉だぞ?女子がいっぱい取り巻いてる。授業中に「見て見て!カイくんの写真が撮れたー」とか騒がれてるあいつが?私を?』ポチポチッ。
『あっ!アキのキャラが変わった!』ピルピルッ。
『んな事、関係ないよ!で?』ポチポチッ。
『だから噂だって言ってるでしょ!信じていい確率は10%以下だよ。』ピルピルッ。
『あっそ』ポチポチッ。
リカはこういう短いのを送ると返ってこなくなるのだ。流石に夏だと言っても暗くなってきているのにそこらへんのベンチに高校生が座ってメールしているのは変だろう。確かこの前この辺で変質者が出たらしい。などと考えていると二又の道に出た。急いでいるから…と、そこまで考えて苦笑がもれた。もう私を待ってくれる人はいないのだ。この前、母が死んだから。唯一、血が繋がった人だったのに…と気持ちが湿っぽくなってきたので頭を振り振り、"まー近道がいいか"と、近道の方に進んだ。ちなみに近道はほとんど人が通らない。電柱がポツポツあるだけだ。
私は歩いていると少しずつ怖くなってきたので、鼻歌を歌い始めた。と、後ろから少しだけだが、ヒタヒタと足音がする。"よかった。人か。"と思ってチラッと後ろを向いた。が、そこには誰もいない。しかし足音はする。
――ヒタヒタ――
さっきまでは気付かなかったが、妙に視線が気になる。
まるで猟犬が獲物に気付かれないよう、しかし見失わないように見ている。イヤ、狙っている。
――ヒタヒタヒタヒタ――
でも、視線を出すような人はいない。というより、人っ子一人いない。
――ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ――
自分が鼻歌など、既に止めていることに気づく。反対に歯がカチカチいっている。
と、それを認めた瞬間だった。ブウゥゥゥンという音がすると、見えていた灯り全てが消え、自分の周り1mだけぼんやりと見えた。と―――
――ヒタヒタ――
さっきと同じ足音がこちらに向かってくる。
――ヒタヒタヒタッ…――
音が途切れた瞬間だった。2mほど先にいきなり人が現れた。イヤ、人形の。
「おまえは…うむ。ライ様に頂いた紙と同じ顔だ。きっと目標はこいつかな・・・。一応調べるか…」
というと少し息を吸い込んだ。