Hanashi
車掌さんと“結構、いるんだなぁ”
車掌さんに会うために後ろに向かっている羽瑠は4両目に来ていた。
だいたい1両に8、9人いた。
そんな事を考えているうちに最後尾、車掌さんのいる所にたどりついた。
―コンコンコン―
ドアを叩く。
車掌さんが振り向く。
と、頭に直接声が響いてきた。
“貴女ならこの部屋に入れますから、どうぞそのドアからお入り下さい”
羽瑠は少し躊躇いながら、ドアの取っ手に手をかけ、ひいた。
―ギ、ギギィ―
「すいません、車掌さん。」
「はい。別に、いいですよ。こういうのが僕の仕事ですから。で、どんな質問ですか?」
「え?えぇーとっ、この電車ってどこ行きですか?」
車掌さんは少し困った笑いを浮かばした。
「うーん、人それぞれというか…『行き先』というものはありませんね。」
「え?どういう事ですか?」
「うーん、そのまんまなんですけどねぇ。ちょうどいい、この電車の真実を教えましょう」
「はぁ…」
「実はこの電車に乗ってる人は事故にあったんです」
「え?じゃ、じゃあ私死んで、こ、この電車は死の列車みたいな?」
「んーー、ちょっとちがうんだなぁ。その、事故は普通だったら手術でなんとかなる程度なんですよ。でも、この電車に乗る人は心に『迷い』があるんです。“死にたい”みたいな。貴女も“自殺してみたい”みたいなことを考えていませんでしたか?」
「……」
車掌さんは少し笑ったような気がしました。いわゆる、微笑ですね。
「肯定と採っていいですか?」
「はぃ…」
出てきた声は自分でも驚くほど小さな声、蚊の鳴くような声だった。
「降り方というか、降りれる条件は生きるか死ぬか決心がついたらです。
「ありがとうございます…。あのもう少しいいですか?」
「ええ。」
「あの、『生きる』と決めたら…」
「ドアから普通に降りれますよ。」
そのあとの含み笑いがすごくきになるんですけど…
「『死ぬ』と、き、決めたら…」
「この電車から直通で天国か地獄です♥」
「……。あの、最後に」
「はい」
「あなたは、何者ですか?」
「うーん、そうですねぇ、難しい質問ですねぇ。貴方達人間の概念でいくと…悪魔?堕天使?みたいなかんじですかね。」
「あ、悪魔…堕天使…」
「まぁ、貴女たちは悪魔と堕天使を分けて考えてるみたいですけど、ほんとは一緒の存在なんですよ?」
「あ、悪魔…堕天使…」
「あの、大丈夫ですか?」
「あっ、すいません、ありがとうございました」
走り去るように羽瑠は部屋から出ていった。
「やっぱり、これからは存在は教えないでおこう…」
そんな車掌さんだった。