Hanashi

生きたい?

『生きる』…。
私は生きたいのかなぁ。そりゃぁ、生きなきゃ。
今死んじゃったら、今まで育ててくれた家族に悪いし。
学校も、せっかく進学校行ってるし。
友達も悲しむし…。
そこまで、考えて、きずいた。
“なんて…「なんて、外的要因ばっかりなんだろう、貴女の生きる意味は。」
その通りだった。
「…車掌さん。私の考えてる事がわかるの?読んでるの?」
もはや、いきなり横に現れても驚くまい。
「いやぁ…。」照れた風に車掌さんは頭を掻いた。
「ここにいらしゃる方の心の声は全て私の頭の中に響いてきます、「それって…」聴きたくても、聴きたくなくても、ですが。」
“それって、プライバシーの侵害じゃない!”という言葉を私が飲み込まざるを得ない程までに、車掌さんは悲しそうな、辛そうな、なんとも云えない表情をしていた。
「この仕事に就き始めたときは発狂するかと思いました(笑)」
やたら、優しく微笑んだ。
“笑いながら言う言葉ではないと思うんだけどなぁ。”
「ふふ、優しいんですね。まぁ、これが私の仕事ですから。」
ふわり、と車掌さんが隣に腰掛けると車掌さんの体温が伝わってきた。
それは、暖かくなくて、むしろ、冷やっこくて、冷たいわけじゃないけど、絶対人間ではない温度。
「……しゃ、掌さ、ん」
「何ですか?」吐息が感じられる。
「車掌さんの名前って何なの?」

答えを聞く前に車掌さんの体温と、電車の揺れに誘われて葉山 羽瑠は2日ぶりに寝た。
「私に名前なんて、あるわけないのに。それにしても、これじゃぁ動けないなぁ。」
そこには車掌さんの肩に頭をのっけて気持ち良さそうに眠っている羽瑠がいる。
それを、やたら、いとおしそうに見つめる車掌さんがいる。
二人をのせて走る電車の行き先は未定。