金魚と夢の後で



「みさき、ここにお前の友人の墓があるのか?紅寺?」
「うん、そうだよ。ハル君の、あぁ、隣に住んでたお兄ちゃんなんだ。」
美咲は長い黒髪を揺らし、高めのハイヒールをカツカツ鳴らしながら歩き始めた。
「へぇ。・・・お前、好きだったんじゃないだろうな?」
俺はその後ろ姿を追いかけながら聞くと
「そんなことあるはずないでしょ?」
と即答えは返って来た。
と、美咲は髪を掻き揚げながら振り返った。
「だって私が今愛してるのは達也だけなんだから。」
と言って皮肉げに口の端だけ上げて笑った。
「いいかげんその笑い方止めた方がいいぜ。」
「これが、私なんだからいいの」
と言ってまた歩き出した。何か言ったかのようだったが風で聞こえなかった。
「着いたよ。後ろで待っててくれる。」
聞かれたくないし。
「ああ。待っとくな。」

ハルが死んでから、もう8年が経ったね。
もう私も大人。
後ろにいるのは私と来年結婚する事になった人です。
そう、私結婚しちゃうの。
だから、ハルの好きなキンギョ草を供えに来るのも今日で最後。
ハルの事、いつまでも好き。だけど、


     「それは、もう過去の事だから。」

  ・・・あとがき