金魚と夢の後で



ぶつかる!ぶつかる!ぶつかる!ドン!
柔らかいモノが私にぶつかった。
「え?」
私は、ハルに抱かれて脇道にいた。
良く見ると、ハルは血だらけだった。
「はる!」
「危ないじゃないか。それより、さっきの続きだけど。」
「へ?」
「好きだよ。サキ。僕も、大好きだよ。」
「じゃ、じゃあ、なんで結婚したの?」
「それは、ウソなんだ。」
「え?じゃあ、あの人は?」
「ヘルパーみたいなものだよ。」
「ヘルパー?ハル、どこか怪我してたっけ?」
「いや、僕は、脳に障害があるんだよ。」
「え?」
「頭の中に記憶を食い破っていく虫がいるんだ。」
「え・・・うそ?」
「だから、何であの金魚の名前が僕と一緒の『ハル』という名前なのか、もう僕は分からないんだ。」
「ウソ・・・」
「それでね、お医者さんが言うには、僕はあと3年ぐらいで手が完全に動かなくなって、4年後には足、そして10年後には、いろんな機能が停止して死ぬんだって。」
「ウソ、ウソよ。ウソでしょ?」
「あーあ、コレを言わないために、ヘルパーさんと結婚したふりしてたのに」
「ふり?」
「うん。ま、死ぬのが、10年ほど縮まっただけ。」
「そんな事言わないで。」
「はは、好きだよ、サキ」
「ハル、金魚ってグミ食べると思う?」
「は?何いってるんがよ?」
「・・・好きだよ。ハル。」
二人はそっと唇を…

そして、カクッ
「死んじゃ、やだ。ヤダ――